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工場監査で見るべきポイント

こんにちは、BUPPANコンサルタントの小林です。
春節休みもようやく終わりましたね。3月以降、直接工場に行ってみようと思っている方も多くいると思います。
これまでのコラムで「限度見本」「検品基準書」「第三者検品」と、品質管理の仕組みについてお話ししてきました。これらは全て「生産された商品をどう検査するか」という出口の話です。
今回はもう一歩上流に遡って、「そもそもこの工場に任せて大丈夫なのか」を見極める工場監査について解説します。
結論から言うと、工場監査で最も大事なのは設備の立派さではありません。「この工場は品質を維持する仕組みを日常的に回しているか」という運用面の確認です。私はこれまで300社以上の工場監査を行ってきましたが、最新設備を持っていても品質がボロボロの工場もあれば、設備は古くても安定した品質を出し続ける工場もあります。その差は「現場の運用」に出ます。
なぜ工場監査が必要なのか?
皆さんも1688.comなどで工場を探す際、工場のページに掲載されている写真や認証マークを見て判断していませんか?
しかし、ネット上の情報だけでは分からないことが山ほどあります。
・掲載写真は数年前のもので、現在の設備状況と異なる
・認証マーク(ISO等)は取得しているが、実際の運用が伴っていない
・工場の営業担当が見せたい部分だけを見せている
よって、現地に行って自分の目で確認する、もしくは信頼できる人間に確認してもらうことが不可欠です。これは製造業で言う三現主義(現場・現物・現実に基づく判断手法)の基本でもあります。
工場監査で見るべき5つのポイント
では、実際に工場に行ったとき何を見ればいいのか。私が監査で必ずチェックしている項目を5つに絞って解説します。
➀ 5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の実態
工場に入って最初の5分で確認できる、最も分かりやすい指標です。
・通路に仕掛品や梱包材が放置されていないか
・工具や治具が決められた場所に戻されているか
・床に油汚れやゴミが散乱していないか
・作業台の上が整理されているか
5Sが崩れている工場は、品質管理以前の問題です。「整理整頓ができない現場で、微細な外観不良に気づけるはずがない」というのが私の経験則です。逆に言えば、5Sがしっかり回っている工場は、他の管理も一定レベル以上であることが多いです。
➁ 生産ラインの流れと標準化
次に生産ラインを歩きながら確認するのは、作業が標準化されているかどうかです。
・各工程に作業手順書(SOP)が掲示されているか
・作業者が手順書通りに動いているか
・ライン上の仕掛品がスムーズに流れているか、滞留していないか
ポイントは「手順書があるかどうか」だけでなく、「作業者が実際にそれを見ているか」です。壁に貼ってあるだけで誰も見ていない手順書は、無いのと同じです。私は監査時に作業者の手元と掲示物を交互に見て、動作が一致しているかを確認します。
➂ 検査工程の体制
生産ラインの終盤にある検査工程は、特に注意して見ます。
・検査員が何人配置されているか
・検査に使う治具や計測器は校正されているか(校正シールの有無と期限)
・不良品の隔離エリアが明確に区分されているか
・検査基準書や限度見本が検査員の手元にあるか
過去のコラムでもお話しした通り、検品基準書と限度見本は「作って終わり」ではなく「現場で使われているか」が全てです。監査では、それが実際に機能しているかを自分の目で確かめる絶好の機会になります。
➃ 材料・部品の管理状態
倉庫や材料置き場の状態は、品質トラブルの予兆を読み取るのに有効です。
・原材料に品名
・ロット番号
・入荷日が明記されているか
・先入れ先出し(FIFO)が守られているか
・不良材料と良品材料が明確に分離されているか
vol.497のコラムで「サンプルと量産で材料が違う」というトラブル事例をお話ししましたが、材料管理がずさんな工場ではこの種の問題が起きやすいです。材料の入出庫記録があるか、トレーサビリティが取れる状態かも確認しておきましょう。
➄ 工場の「対応力」と「姿勢」
最後は数値化しにくい部分ですが、私が最も重視しているポイントでもあります。
・監査時に営業だけでなく、製造や品質の責任者が同席しているか
・こちらの質問に対して、データや記録を出して回答できるか
・問題点を指摘したとき、言い訳ではなく改善の方向で話ができるか
営業担当だけが対応して、技術や品質の人間が出てこない工場は要注意です。これは工場内部で「情報の遮断」が起きている可能性を示しています。逆に、経営陣や品質責任者が自ら出てきて真剣に対話してくれる工場は、その後の取引でもトラブルが少ない傾向にあります。
監査時にやってはいけないこと
ここで、よくある失敗もお伝えしておきます。
・初回の監査でコストダウンの話を持ち出す
これは工場との関係構築において逆効果です。初回の監査は品質と信頼構築に特化し、コストの話は信頼関係ができた後のフェーズで行う方が、結果的に良い条件を引き出せます。
・写真を撮らずに帰る
監査で見たことは、必ず写真に残してください。記憶は曖昧になりますが、写真は事実として残ります。良い点も悪い点も記録しておくことで、後日の工場との協議や、他の候補工場との比較に使えます。
・1社だけ見て決める
必ず3社以上を比較してください。1社しか見ていないと、その工場のレベルが高いのか低いのかの基準が持てません。複数の工場を見ることで、自分の中に「良い工場の基準」が形成されていきます。
まとめ
工場監査で見るべきポイントを整理すると、以下の5つです。
・5Sの実態:現場の基本的な管理レベルを測る
・生産ラインの標準化:手順書が「使われているか」を見る
・検査工程の体制:基準書・限度見本・計測器が機能しているか
・材料管理:トレーサビリティと分離管理の状態
・工場の対応力と姿勢:技術・品質部門が対話に出てくるか
設備の新しさや工場の規模よりも、「日常的に品質を維持する仕組みが回っているか」を見ることが、工場選定で失敗しないための最大のポイントです。
皆さんも工場を訪問する機会があれば、この5項目を意識して見てみてください。見える景色がかなり変わるはずです。
今回は以上です。