初回量産立ち合いって何するの?

こんにちは、BUPPANコンサルタントの小林です。
前回は工場監査のポイントについてお話ししました。監査で工場を選び、サンプルを確認し、いよいよ初回量産に入る。ここで皆さんにぜひやっていただきたいのが「初回量産の立ち合い」です。
先に言っておくと、量産立ち合いは必ず現場に行く必要があります。WeChat通話で映してもらえばいいのではと思う方もいるかもしれませんが、それでは不十分です。工場が見せたくない部分はカメラに映しませんし、立ち合いの最大の利点は最初の数台を自分の目で見て、問題があればその場でラインを止められることにあります。これはリモートでは絶対にできません。
なぜ量産の立ち合いが必要なのか
サンプルがOKだったから量産も大丈夫だろう。皆さんの中にもそう考える方がいると思います。しかし私の経験上、サンプルと量産品は別物だと思ってください。
理由は単純で、サンプルは工場の技術部門が1個ずつ丁寧に作っています。最も良い材料を使い、最も腕の良い作業者が全数検査をした上で送ってきます。いわば「工場のベストパフォーマンス」です。
ところが量産になると、製造部門の作業者が流れ作業で生産します。使う材料もコスト重視で選ばれることがあり、検査も全数ではなく抜き取りになります。この切り替わりのタイミングこそが最もリスクの高い瞬間で、ここを自分の目で確認するのが量産立ち合いの目的です。
立ち合いで確認すべきポイント
➀ 部材が試作時と同じか
最初に確認するのは、使われている材料や部品がサンプル作成時と同じものかどうかです。
サンプルの時は良い材料を使っていたのに、量産で安い代替品に切り替えるケースは珍しくありません。パッと見では分からないことが多いので、材料のメーカー名やグレードが書いてあるラベルや包装を確認します。もし部品表(BOM)を事前にもらっている場合は、それと照合してください。自分で倉庫に入って、棚にある材料のラベルを直接確認するからこそ意味があります。
➁ 最初の数台で判断し、止められる
これが量産立ち合いの最大の利点です。
ラインが動き始めたら、最初に出てきた数台を特に注意して見てください。ロゴの印刷位置がズレていないか、色がPANTONE指定と合っているか、組み立てに問題がないか。最初の段階でズレに気づけば、その場でラインを止めて調整を入れることができます。
1000個作ってから気づくのと、最初の5個で気づくのでは損失が全く違います。問題があればその場でフィードバックし、工場の技術者と一緒に原因を確認してから生産を再開させます。
私の経験上、既に作り終わった後に検査に行ってもあまり効果的とは言えません。なぜならそこで問題を指摘しても工場はゴネます。実際にやり直しや修正を行えば多大な修正コストがかかり関係値の悪化も招きます。
➂ 消費者と同じ目線で開封から使用まで試す
これは絶対にやっていただきたいことです。量産ラインから出てきた製品を1台、実際に箱から開封して、消費者と同じように使ってみてください。
なぜかというと、写真やスペック表だけでは分かり得ない部分があるからです。手に持った時の質感、ボタンを押した時の感触、蓋を開けた時の硬さ、使用中の使い勝手。こういった使用感は、実際に触って使ってみないと分かりません。また、しばらく使う中で初期検査ではわからない品質不良を発見することもあります。
私も過去にこれをしっかりやっておらず、クライアントさんに大迷惑をかけたことがあります。実際の使用環境と同じ環境で試し使いしていれば商品の品質問題に気付けたのに、という経験がありました。
皆さんは自分の商品を販売している当事者ですから、「消費者がこの箱を開けた時にどう感じるか」を一番理解できる立場にいます。開封時にパッケージが開けにくいとか、取扱説明書がどこに入っているか分からないとか、そういった細かい点は消費者のレビューに直結します。
工場にいる間に1台を最初から最後まで使ってみて、気になった点はその場で工場に伝える。これだけで、出荷後に消費者から指摘されるポイントや隠れた不良を事前に潰すことができます。
➃ ライン内の不良発生率と不良品管理を確認する
量産立ち合いでは、ライン内でどのくらいの頻度で不良が出ているかを自分の目で観察してください。
歩留まりという言葉をご存知でしょうか。これは投入した材料や部品に対して、良品として完成した割合のことです。たとえば100個作って95個が良品なら歩留まり95%です。この歩留まりが悪い、つまりライン内で大量の不良が出ている状態だと、当然その中から検査をすり抜けて日本に届いてしまう不良品も増えます。逆に歩留まりが良い工場はそもそも不良が少ないので、日本側に流出する不良品も少なくなります。
立ち合いの時にラインを歩きながら、検査工程で弾かれている不良品の数や種類を観察してください。もし特定の工程で同じ不良が繰り返し出ているようであれば、その原因を工場の技術者と一緒にその場で確認します。原因を先に理解しておくことで、後から「なぜこの不良が出たのか」という調査の手間が省けます。
同時に、弾かれた不良品がどう扱われているかも見てください。良い工場は不良品を即座にラインから外し、赤い箱や専用エリアに隔離します。そしてシフト終了時に不良品の数をカウントし、記録をつけています。一方、不良品が良品の隣にそのまま置いてある工場は要注意です。作業者が間違えて良品と一緒に梱包してしまうリスクがあります。
ライン内の不良発生率と不良品の隔離管理は、その工場の品質に対する姿勢そのものです。
➄ 作業者の手元にSOPと限度見本があるか
工場監査の回でもお話ししましたが、作業手順書(SOP)が壁に貼ってあるだけでは意味がありません。量産立ち合いでは、実際に作業者がSOPを見ながら作業しているかを確認します。
もう一つ大事なのが限度見本です。検査工程の手元に限度見本が置いてあるか、検査員がそれを実際に見比べているか。以前のコラムで限度見本の作り方を解説しましたが、作って終わりではなく、現場で使われて初めて機能します。立ち合いはそれを自分の目で確かめる絶好の機会です。
➅ 梱包工程まで見届ける
製品本体の品質に意識が集中しがちですが、梱包工程も見落とさないでください。
よくあるのは、外箱のバーコードが読み取れない、緩衝材の量が不足している、個装の向きが仕様書と違う、輸出用のラベルが貼られていないといったトラブルです。特にFBA納品の場合、ラベルの不備でAmazonの倉庫に受け入れてもらえないケースもあります。
梱包仕様は必ず写真で指示してください。言葉だけだと解釈が変わります。立ち合い時にその写真と実物を照合するのが確実です。
まとめ
量産の立ち合いで見るべきポイントを整理すると、以下の通りです。
〇 部材がサンプル時と同じか、自分で倉庫を見て確認する
〇 最初の数台を確認し、問題があればその場でラインを止める
〇 消費者と同じ目線で1台を開封から使用まで試す
〇 ライン内の不良発生率を観察し、不良品の隔離管理を確認する
〇 SOPと限度見本が現場で実際に使われているかを見る
〇 梱包工程まで見届ける
量産立ち合いにはコストと時間がかかります。しかしここで品質の問題を潰しておくことで、販売後のレビュー悪化や返品コストを防ぐことができます。特に自分で1台を開封して使ってみることは、販売者だからこそできる最も効果的な品質確認です。後から消費者に指摘される前に、自分で気づいてその場で直す。これが量産立ち合いの本質です。
今回は以上です。