Strategy

年末に、会社が傾きかけた話

あけおめです。猪狩です。 昨年末はいろいろありました。 正直に言うと、少し焦りました。 今、こうしてこの文章を書いているということは、 結果的には「大丈夫だった」わけですが、当時はわりと本気で、会社が傾く可能性を考えていました。 この話は、特別な失敗談ではありません。 むしろ、 ものづくりをしていて、 海外生産をしていて、 ちゃんと事業が回っている会社ほど、 自分事として想定できる話です。 ですので、BUPPANの皆さんには共有しておきたいと思いました。 というわけで、今回は、しくじり先生的なやつです。

海外生産ではよくある流れ。

まず、デポジットとして前金を30%。 工場が生産を進め、完成後に残りの70%を支払う。 その後、出荷。 今回もその通りでした。 違ったのは、その後です。 完成後、残り70%を支払った直後から、 工場の担当者( = 社長本人)と、連絡が取れなくなりました。 金額にして、約2000万円。
その工場では、メイン商品を生産しており、10年以上のお付き合いになります。 社長とは4回ほど直接お会いしていて、お互いに呼び捨て。 家族を交えての交流。 ビジネスも順調で、これまで大きなトラブルは一度もありません。 むしろ、かなり良くしてもらっていたと思います。 だからだと思います。 WeChatで「そろそろ仕上がる予定だよ」と返ってきた時、 生産完了を確認する前に、残り70%を支払ってしまいました。 本来なら、やってはいけない判断です。

今回の生産は、年末商戦向けでした。

8月にデポジット、10月頭に残金支払い。 通常の船便なら、10月半ばから遅くとも末には日本に到着。 ブラックフライデー、スーパーセール、ホリデーシーズン。 在庫管理、完璧! の……はずでした。 ところが、10月半ばになっても出荷の連絡が来ない。 というか、返事がない。 追いメッセージを送る。 3日間スルー。 少し、嫌な予感がしました。
再度メッセージを送ると、数日後に返事が来ました。 「不良品が見つかって、その部分だけ直している。来週には揃う。」 つまり、10月末発送。 ブラックフライデーはギリか。 念を押して待つ。 翌週、発送確認。 ……返事がない。 さらに、追いメッセージ。 返事がない。 チャット履歴は、僕の連投で埋まっていきました。 なんだこれ。 完全にメンヘラのLINEみたいだな、と思いました。 この頃の不安は、 「年末商戦の機会損失」から、 「そもそも、商品は届くのか?」 に変わっていました。

11月に入り、強めのメッセージを送りました。

「なんで返事をくれないんだ?10年の仲じゃないか。」 2~3日後、返事が来ました。 「本当にごめん。 スケジュール管理ができていなくて、全部、私の責任だ。 今、最終の仕上げをしている。もう少しだけ待ってほしい。」 ブラックフライデーは、この時点で完全にアウト。 機会損失は、数千万円。 でも、その数字よりも、 「連絡がついたという安心感の方が勝っていました。 最悪の現実を、 目の前の小さな安心感で包んでしまう。 共依存とか、メンヘラの人って、たぶんこういう感覚なんだと学びました。
11月半ばになっても、状況は改善しません。 連絡は途切れがち。 たまに「ごめん」という返事が返ってくるだけ。 この時点で、スーパーセールも不可能。 発送見込みが立たないので、予約販売もできない。 ホリデーシーズンは、丸ごと消えました。 ただ、この頃になると、 「売ることができない」よりも、 別の怖さが前に出てきました。

もし、ここで最悪のケースが、、、

つまり、取引先の倒産。 すでに支払った 2000万円は消える。 同じ商品を作るには 再生産でさらに2000万円。 その間、売るものはない。 工場選定 ~ サンプル制作 ~ 本生産 ~ 販売&回収。 おそらく半年はかかります。 でも、会社は止まりません。 人件費、家賃などの固定費+運営の維持費。 メインの売上が立たなくても、 固定費・維持費として約1500万円くらいは出ていきます。 合計すると、5000~6000万円。 ただし、これは 「6000万円損する」という話ではありません。 小売業は、 先にキャッシュを出し、あとで回収する構造です。 キャッシュを持つ時間は短く、基本的に回しているだけ。 その構造のまま、 今回のようなトラブルがトリガーになると、 普段はそこまで不要なキャッシュが、局所的に、一気に必要になる。 構造的に、詰みゲーです。
この頃、現地の状況を把握するため、 工場社長の元部下で、今も交流のある中国人の友人に内偵を頼みました。 彼女によると、 委託先の工場が倒産し、 生産工程の一部が止まっているらしい。 社長は、その対応に苦労している、とのこと。 工場自体が倒産したわけではない。 それが分かっただけで、 精神的にはずいぶん楽になりました。

結果的に、

10月頭に発送予定だった商品は12月半ばに出荷され、 日本に届いたのは1月8日。 ホリデーシーズンは、すべて失いました。 でも、会社は残りました。 (借り入れや、個人資産を切り崩す必要もなかった)

 


この話はここまでにしましょう! この流れのまま、リスク管理の教訓にすることもできるし、 キャッシュフローの失敗談と対応策としてまとめることもできると思います。 でも、ここで終わらせてもいい気がしています。 個人的に、BUPPANというコミュニティの成熟さを感じているからです。 以前は「売上をあげる方法」が主だったけど、 最近のトピックは「生き方」や「守り」など、多岐にわたります。 (前回の小堀さんのは、個人的に神コラムだと思います) ですので、 個人的な結論を書く代わりに、この質問で締めますね。

 

「もし、突然、あなたのメイン取引先が倒産したら、どう対応しますか?」

 

オフ会とかでお会いした時にでも、こっそり盛り上がりましょう!
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