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2012年、ある電機メーカーの研究所の会議室。

「黒田君、物理的な設計としては君の案のほうが良いと思うけど、
今回は〇〇部長がああ言ってるから部長案でいこう」

2012年、ある電機メーカーの研究所の会議室。

電気自動車の駆動用モーターの今後の開発方針についての会議のあと、
上司に言われた一言だった。

今回の自分のモーターの設計は、駆動用モーターに求められる性能を
いちから見直して電磁界解析を行い、出力トルクとエネルギー効率が
JC08モードという走行モードで最大化できる自信作だった。

冒頭の一言をきっかけに自分の中で何かの
スイッチが切り替わったと今になって思う。


自分の父親はある別のメーカーの生産技術エンジニアだった。

小学生の頃はよく日曜日に父親の会社について行った。
父親が大きなディスプレイに向かって何かを入力する姿を見て、
俺も将来はエンジニアになろうと思った。

子供の頃から勉強は好きだった。
浪人はしたけどそこそこの大学の理系大学院を卒業して、
社員が連結で14万人ぐらいいる総合電機メーカーの研究所に就職した。

元々何かを設計したりものを作ったりするのが好きだったので、
会社での仕事は内容によっては面白かった。

内容によってというのは、
設計して試作機を作って実機試験をやる、
みたいな仕事は面白かった。

反面、社内の偉い人向けの資料作りに一週間かけるとか、
朝9時から夕方の18時までぶっ続けで内容の薄い会議をするとか、
社内の飲み会と一本締め、みたいなのが嫌いだった。

明らかに会社員適性が低かった。


その頃、そのメーカーの新規事業として、
電気自動車やハイブリッド車用の駆動用モーターを開発して
世界中の車メーカーに販売することになった。
研究所からはなぜか俺一人が開発メンバーとして参加することになった。

新規事業の初期メンバーとしての仕事はやりがいがあり、面白かった。
ただとんでもなく忙しかった。

駆動モーターの開発は主に家から離れた工場でやっていたので、
家から100km離れた工場に電車で1年以上毎日通った。
家を朝6時半に出て、遅い日は深夜1時に家に帰った。

ここでも仕事は内容によっては好きだったが、
会社員でい続けることへの疑問と、
長時間働いていたこともあって少しずつ体調がおかしくなった。


最初は腹痛と下痢がたまに起きる程度だった。

もう少し経つと、
電車での一駅が耐えられなくなるほど腹痛が頻発するようになった。
毎日100km離れた工場に電車で1時間半かけて行かないといけないのに、
一駅が耐えられないのは致命的だった。いつまでも仕事場に着けない。


産業医から休職するように言われ、
手持ちの仕事は研究所のほかのメンバーに渡して数ヶ月休職することになった。

そのうち体調が良くなってきたので復帰したが、
数ヶ月するとまた同じような状況になった。
今度は腹痛だけでなく、
突発性難聴で一時的に左耳がほとんど聞こえなくなった。
会社を辞めようと思った。


「黒田君、物理的な設計としては君の案のほうが良いと思うけど、
今回は〇〇部長がああ言ってるから部長案でいこう」



冒頭の言葉で当時は大いに絶望したが、今では感謝している。
これをきっかけに会社員だった自分に小さなスイッチが入った。


その頃は100km離れた工場に行くこともなくなり、
会社がかなり勤務時間を短くしてくれていたので、副業で物販を始めた。

半年後、7年間働いた会社を辞めて物販だけでやっていくことに決めた。


一度会社員になったことは、
体調がおかしくなるなどデメリットも大きかったが、
メリットも大きかった。

今物販にも活かせている電気の知識、
物理設計の知識、生産技術の知識が付いたということもある。

ただもっと重要なのは、
かつての日本人のキャリアのロールモデルとされていた
「いい大学を出て一流企業に入る」が
人によっては正しくないことが体験できたことだ。

あの体験をせず大学を出てすぐに起業したりしていたら、、、
自分が大企業で働いていたら人生はもっと良かったんじゃないかとか、
大企業で働いている人への一種の嫉妬のようなものを
感じてしまうかもしれない。今はそれは全くない。

今考えるとおそろしいことだが、
会社員時代は定年を待つような毎日を送っていた。
会社員であるうちは我慢して、
定年したら好きなことをしようと考えていた。
実際今もそう考えて生きている会社員はまあまあ多いと思う。

でもそれは明確に間違いだ。
その考えでいると、いつか人生が終わるとき、
もっと自分の人生を生きれば良かったと後悔する。
大体の物事は人によって条件が違うので
「人による」としかいえないこともあるが、
これは全員にいえると思う。

人生は今しかない。
やりたいこととやるべきことは今やるしかないのだ。




昔、会社員の頃毎日乗っていた新快速電車からは、毎日海が見えた。
帰りは海が見えるような時間に帰ってなかったので真っ暗だったが、
行くときは朝日に照らされた海が毎日きれいだった。

当時は電車の中で、この辺に住めたら楽しいだろうなー
とか思いながら毎日通過していた。
今ではそのすぐ近くに移住して、
毎日海岸を散歩して暮らせるようになった。


今回は僕が物販を始めたきっかけにもなった
大企業就職から退職までの実体験のお話をしました!
大企業を体験した人もしてない人も、
大企業って世間で言われるほどいいことばっかじゃないんだぜ
と知ってもらえたら書いた甲斐があったというものです。

ちなみに今は耳も聴こえるし
体調もとてもいいので心配しないでください。笑

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