Strategy
検品基準書ってどう作る?

こんにちは、BUPPANコンサルタントの小林です。
前回のコラムでは「限度見本」を取り上げました。図面や文章では伝わらない"合否の境目"を現物で合わせるための道具、という話をしました。
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今回はその相棒、「検品基準書(Inspection Standard / 検査基準書)」について、実務に使用できるレベルで解説します。
結論から言うと、検品基準書は立派に作るほど読まれなくなります。現場が"パッと見てすぐに理解できる形"にまで落とし込むことで、限度見本と一体になり有効な取り組みとなります。
なぜ検品基準書が必要なのか?
たとえば、同じ「キズあり」でも日本と中国では基準が違います。
日本では「1mmの擦り傷でもダメ」とされる製品が、中国では「使えるからOK」と判断されることがよくあります。
ここで役立つのが検品基準書です。
図面や写真、表現しにくい仕様を「言葉」で明文化し、誰が見ても同じ判断ができるようにする文書です。つまり、「限度見本は現物の共通言語」「検品基準書は文章の共通言語」です。
この2つを組み合わせることで、「見て理解できる+読んで判断できる」状態を作ります。
検品基準書に入れるべき5つの項目
➀ 検査の目的・対象範囲
「誰が、どの製品を、どの段階で、何のために検査するのか」を明記します。
→ 例:「品名/自社品番/工場の品番/最終出荷検査用」
自社の品番や品名だけでなく、相手工場の品番も明記するのがポイントです。そうすることで双方の品番の勘違いなどを防ぎます。
➁ 検査区分と検査レベル
AQL(合格品質水準)を設定し、どの区分を抜き取るかを明示します。
AQLは中国の家電工場のほとんどが理解している国際的な検査基準です。
≫ https://www.fujigom.co.jp/manufacturing/20231007-1183/
ここが曖昧だと、中国側は「目視でOK」と判断しがちです。
➂ 検査項目リスト
代表的なチェック項目を表形式で並べます。
➃ 判定結果と対応ルール
検査後の処理を明確にします。
→ 例:「NG判定がAQL上限を超過した場合はロット再検査」「不具合品は識別タグを貼付し隔離保管」
工場によってはこのルールが存在しないため、書いておくことが重要です。
➄ 付属資料
限度見本・マスターサンプル・検査手順書・写真など。
特に外観項目は限度見本の写真とリンクさせると理解が早くなります。
【作るタイミング】
検品基準書は、試作品の品質が確定した時点で作成します。
つまり、「この仕様でいこう」と双方が合意した段階です。
試作前に作ると修正が多くなり、量産後だと手遅れになります。
理想的な流れは以下の通りです。
1.試作完成
2.限度見本・マスターサンプルを作成、確定
3.検品基準書を作成・相互確認
4.取引基本契約書に添付
5.量産開始
この順番を守ることで、品質トラブルが発生しても「書類と現物の両方で証拠がある」状態を作れます。
【現場で"読まれる"基準書にするコツ】
自分で検品基準書を作成していると、ついつい完璧を求めて検品基準書自体のページ量が増えたり文字数が増えたりして結局読まれない基準書になっている工場も少なくありません。
よって私が現場で推奨しているのは、1ページ1項目の検品基準書。
A4で見開き1枚、例えば以下のように構成します。
●タイトル:「外観検査基準書」
→項目を他にも動作検査基準書、等にしていき1項目1ページを心掛ける。
・左に良品の写真、右に不良品の写真
→A4用紙1枚で比較されている基準書は一目でわかるので良いです。
・傷は○mm以上はNG
→明確に記載。合否の境目が曖昧なものに関しては「限度見本を参照」「マスターサンプルを参照」のように記載してもOK。
・判定方法は30cmの距離から800ルクス以上の照明下のもと行う。
→どんな環境下で検査をするのかもとても重要です。検査場所の環境が悪いと、ミスを見過ごしてしまったり、正常な判断ができない可能性があるためです。
これなら、現場の作業者が読めます。
つまり、「文章ではなく"理解できる資料"にする」ことが重要です。
【運用で成果を出すための3つの仕組み】
1.工場との共有方法を固定化する
→ WeChatグループに最新版をPDFで常駐させ、更新時は必ず通知。
2.第三者検品会社や代行業者にも同じ基準書を渡す
→ 限度見本+検品基準書を共有することで、"誰が検査しても同じ判断"になる。
3.品質トラブル時はこの書類で話す
→ 感情ではなく「文書基準」で議論できる。これが最大の防御になります。
【まとめ】
限度見本は「感覚を共有」するツール。
検品基準書は「言語で共有」するツール。
どちらか片方だけでは不十分です。
両方を揃えて初めて、"見える品質"が実現します。
現場が読めて、実際に運用できる基準書こそが本物です。
次回は、この検品基準書を第三者検品会社と連携させる方法について解説します。