Strategy
第三者検品と輸入代行会社での検品

こんにちは、BUPPANコンサルタントの小林です。
過去2回のコラムで「限度見本」「検品基準書」を整える話をしてきました。
≫ https://buppan.media/column/15580
≫ https://buppan.media/column/15672
今回は、その土台を使って実際に"どこで・誰に・何を"検査してもらうのかを整理します。皆様の中には「検品って具体的に何をするの?」という方もいるはずなので、検品の意味と中身から、第三者検品会社と輸入代行会社の検品の向き不向きまで説明します。
まずは検品とは何のためのものなのか。ベテランの方も初心者の方ももう一度おさらいしてみましょう。
1.検品は何のために行うのか
検品=「不良を分別して市場での不良流出を防ぐこと」と考える方も多いと思います。しかし合否判断は実は最初の入り口です。では解説していきましょう。
検品の目的は主に三つに分解できます。
・第一に、契約・図面・検品基準書・限度見本に対する適合確認です。これらの基準に沿って良品と不良品を分けます。これが先ほどの入り口の部分ですね。
・第二に、ロット単位の"傾向"をつかむこと。パーセンテージの少ない不良を見つけるよりも、同じ種類の不良がどこで多発しているのかを把握することで、設計不良なのか組立不良なのか部品不良なのかを判別できます。それにより次ロットの改善につながります。
・第三に、出荷可否の意思決定材料を残すこと。写真・動画・測定値をそろえ、後日揉めない証拠にしておく。ここで書類と現物基準(限度見本)を一体で使う意味が出ます。
2.現場で実際に行うこと
では次にどのような検品の内容があるのか見ていきましょう。
代表的な観点を順に挙げます。
【外観・寸法】
傷の長さや深さ、段差の有無、隙間、バリ、歪み。寸法はノギスやゲージで許容差に収まっているかを測ります。色はPANTONEチップで判定することが多いです。
尚、外観は"見る条件"をそろえないと結論がぶれます。背景、照度、距離、観察秒数を検品基準書で固定します。
【機能・通電】
センサー反応・駆動・タイマー・連続動作など、製品が"説明書通り使えるかどうか"の本体確認。家電は"10回中10回"の再現性が必要です。
【安全・信頼性】
異常発熱、ショート兆候、異音、ケーブルの抜けやすさ、コネクタ保持力。量産立ち上がりでは短時間でも負荷をかけた連続運転を入れて、隠れた不良を拾います。法規制がある製品(バッテリー内蔵、AC接続など)は、検品の枠内でも最低限の安全確認を盛り込みます。
【材料・化学】必要に応じて材質識別(樹脂記号、金属種)、匂い、塗装の剥離、有害物質の疑いがないか。ラボ試験は別枠ですが、現場検査でも簡易テープ試験や摩耗で塗膜の弱さは拾えます。
【表示・同梱・数量】
ラベル位置と傾き、表記ミス、保証書や取扱説明書の封入、付属品の欠品。軽微なミスでも市場クレームに直結するので、丁寧にやる価値があります。
【包装・輸送強度】
外箱の誤表記、封緘状態、緩衝材の入れ方。輸送事故が多い品目は、簡易落下・角落ちの強度確認まで入れておくと安全です。最後は積載(コンテナ監査)で数量・積み方・封印を見て、輸送中リスクを抑えます。
これらを、抜取検品もしくは全数検品で効率よく確認します。全部を全数でやる必要はありません。機能は全数、表示は抜取、包装は抜取、と項目ごとに強弱を付けるのが現実的です。判定が割れそうな項目は、限度見本で現物を見て最終判断を合わせます。
3.取引形態で選び方は変わる
ここから、第三者検品と代行会社での検品の向き不向きを取引形態ごとに整理します。
実際にこの基準や限度見本を誰に渡し、どのように検査を行うべきか。
検品の委託先は大きく分けて次の3種類です。
(1)工場(メーカー)自身による検品
(2)第三者検品会社による検品
(3)輸入代行業者(代行会社)による検品
以下、それぞれの特徴とメリット・デメリットを整理していきます。
(1)工場(メーカー)への直接委託
工場と直接取引をしている企業の場合、もっともシンプルなのは工場に検品基準書と限度見本を渡し、自主検査してもらう方法 です。
理想を言えば「工場だけの検査で、不良をすべて弾いた状態で日本に届く」これが最もコストも低く、管理も簡単です。
しかし、現実には以下の問題が頻発します。
・付属品の入れ忘れや入れすぎ
・外観不良の見落とし
・動作検査が不十分
・基準書を守らない
・ライン作業員の入れ替わりによる品質ぶれ
中国工場の品質管理レベルはピンキリであり、工場検品のみではトラブルが起こることを、皆さんも経験していると思います。
このギャップを埋めるために、多くの企業が第三者検品会社や代行会社へ検品を委託するわけです。
(2)第三者検品会社による検品(インライン検品が可能)
中国には日本向け・海外向け企業を顧客とした第三者検品会社が多数存在します。彼らの大きな特徴は次のとおりです。
● インライン検品が可能
通常の「完成品を梱包後に検査する」方式ではなく、"工場の生産ラインに検査員として入り込み、製造工程内で検品する方式"です。
これにより、
・シュリンク包装など「開封できない」製品でも外観チェックが可能
・動作確認・寿命試験・老化試験などカスタム検査が可能
・不良品がどの工程で発生しているか可視化される
といった大きなメリットがあります。
● 正確な不良データの取得が可能
第三者検品会社は、不良品を集計し、原因分析レポートを提出してくれます。工場側が修理して隠してしまうケースがあるため、「実際にどれだけ不良が出ていたか」 を把握できる点は非常に重要です。
● 工場監査サービスも併用できる
多くの検品会社は、以下のような工場監査も実施します。
・5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)が機能しているか
・生産管理体制のレベル
・設備・保守状況
・トレーサビリティの管理状況
品質リスクの事前把握に効果的です。
● 全数検品・抜取検品どちらも対応
例:
・全数をインラインで検査
・1,000個中100個のみ抜取し、結果に応じて追加で詳細検品など要望に応じてカスタマイズ可能。
■ デメリット
① 費用が高め
検査員1名あたり 1日約10,000円(8時間) が相場。
人件費としては日本と近い水準であり、コストインパクトは大きいです。
② 生産日の調整が必要
第三者検品は出張前提のため、1週間前までに工場の生産日程を確定させる必要があります。その為、生産計画が甘い工場の場合、以下が頻発します。
・生産日程がコロコロ変わる
・それに合わせて検品会社のスケジュールも影響
・結果として納期遅延のリスクが発生
これらを防ぐためによくある運用としては、「自社・工場・検品会社でグループチャットを作り、日程調整をリアルタイムで行う」という方式です。
(3)輸入代行業者(代行会社)による検品
輸入代行会社に検品を依頼するケースも多くあります。ここには、第三者検品会社とは異なるメリットが存在します。
● メリット①:検品費用が安い
代行業者は「仕入れ金額の◯%」や「月額費」で利益を出すため、検品だけで利益を取るビジネスモデルではありません。
そのため、
・検品の時間単価が安い。会社によっては1日4000円(8時間)程度の会社も。
・簡易検品であれば高コスパ
という強みがあります。
● メリット②:動作確認や機能チェックも対応(業者による)
開封可能な商品であれば、
・外観検査
・動作確認
・セット内容チェック
など詳細検品をしてくれる業者も増えています。
● デメリット
① 工場→代行業者への送料が発生
代行業者で検品する場合、商品を一度届ける必要があるため、中国国内送料が別途かかります。しかしながら複数の商品を代行会社に集め、検品してもらうのであれば物流コストのメリットが大きい(工場直接取引の場合は原則工場→日本への物流となるため)のでこのデメリットは相殺されるでしょう。
② 品質レベルは業者により大きな差がある
第三者検品会社のような高度な試験設備やインライン検品は期待できない場合も多いです。
まとめ:自社の取引スタイルに合わせた「検品設計」が必要
検品は「どこが正しい」という絶対解はありません。重要なのは、
・商品特性
・想定不良のリスク
・コスト許容度
・工場の管理レベル
・自社の人員体制
これらを踏まえて 最適な検品フローを設計すること です。
たとえば、
・高価格帯・技術製品 → 第三者検品会社 + インライン検品
・標準的な日用品 → 代行会社での検品
・優秀な工場・長期取引 → 工場の自主検品へ移行しコスト最適化
このように段階的に運用することで、日本への不良流出を最小化しながら、費用対効果の高い品質管理体制 を築くことができます。
今回は以上です。